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Memory of Night 2
第7章 緊縛イベント

 土方敏一(としかず)、年齢不詳。ローズの常連で、会うたび宵にセクハラを仕掛けてくる中年男だった。縛りたい、としつこく誘われていたが、まだ諦めていなかったとは思わなかった。
 唯一客の中で本名を教えてしまった相手なのだが、今となっては本気で後悔していた。

「俺にも鞭で打たせてくれるんですか?」

 以前男をあしらうためにとっさについた嘘の性癖を思い出し、問う。

「……あれは、まさか本気だったのかい? 少しなら……いや、考えとくよ」

 宵には鞭で打って興奮する趣味はなかったが、この男なら打ってもいいと思う。もう二度と言い寄ってこないよう、こてんぱんにしたって良かった。
 照明は暗いまま。やがてスタッフの一人が土方に縄を渡した。艶やかな赤い縄は、店の雰囲気も相まって、卑猥に映る。
 それが合図のようだった。

「こんにちは。今日は緊縛の実演会にご参加いただきありがとうございます。私が緊縛師のーー」

 土方による軽い挨拶。それを右から左に聞き流しながら、宵の目は晃を探していた。
 宵は目はいい方だ。薄暗い中に目が慣れると、客達の姿がよく見えるようになった。
 そっと動かしていた視線が、止まる。晃を見つけたのだ。正面より右の奥の方に、晃と先程の女がいた。変わらず露出は激しいままで、透けたシャツと黒い下着のみ。
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