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Memory of Night 2
第7章 緊縛イベント

 その十数分後、二人はタクシーの中にいた。
 晃が住所を運転手に伝えると、その車はすぐに走り出す。

「バイトお疲れ様。良かっね、すぐ上がれて。おまけに明日も休みになって」
「まあな。タクシー代も貰えたし」

 スタッフルームを出てすぐ宵が春加のところに行くと、そのまま上がりでいいよと言われた。

「いきなり呼んで悪かったな。これ、タクシー代。今日は送ってる暇ないから、帰りもタクシーで帰って。晃にもよろしく」

 早口にそれだけ言い、仕事に戻っていった。渡されたのは万札一枚でタクシー代にしては明らかに多かったが、釣りを返している暇などなく結局そのまま貰ってきてしまった。

「夕飯までご馳走になって手土産まで貰っちゃったから、たまには遊びに行こうかな、宵とハル姉がいる日に」
「……来んなばーか。てか手土産って? ーーそれ?」

 宵は晃の脇に置いてある黒い紙袋に目を向けた。ローズに来るときはなかったはずだ。いつの間に貰ったのか。

「そう、今日緊縛イベントで使ってた赤い縄、無料で配ってたよ」
「いや、そんなの貰うなよ」
「せっかくだしさ。家で緊縛体験なんて最高じゃん。明日のバイトなくなったし、ゆっくり楽しめるね」

 楽しそうな晃とは反対に、宵は心底嫌そうな顔をしている。

「……そんなにしたいなら、さっきの緊縛体験に出りゃ良かったじゃん」
「嫌だよ、人前じゃ。宵の緊縛姿を誰かに見せるなんて」

 タクシーが信号を曲がる。晃は体が揺れたふりをして宵の体を引き寄せ、口付けた。運転手からは見えない位置でだ。

「ーー宵の体は全部、俺だけのもの、だろ?」

 独占欲丸出しで晃は言う。
 緊縛になんて興味はないはずなのに、晃が相手というだけで体の芯が熱くなるような気がしてくるから不思議だ。
 結局タクシーがアパートに着くまでの十分ちょっと、晃は宵を煽るように、ずっと手を握ったままでいた。
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