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Memory of Night 2
第49章 エピローグ

「ーー桜、綺麗だねー」
「本当だなあ。……つか、桜の木だったんだな。神社の周りにある木全部」
三月下旬の早朝。宵と晃は姫橋神社にいた。神社の前の石段に腰かけ、満開の桜を眺めていた。
確かに、朝の澄んだ空気の中で眺める桜は絶景ではあったのだが。
「にしても早すぎだっつの!」
宵はつい声を荒げる。周囲には、人っこ一人見当たらない。
一年と少し前にも同じように、晃にこの場所へ連れ出されたことがあった。初雪の日だ。
その時はまだ一緒に住んではいなかったが、わざわざ朝七時頃宵の家まで訪ねて来たのだった。
今は同居しているので、その時よりもさらに早く五時半頃叩き起こされて今に至る。今回連れ出された理由は、『お花見』だという。
「ニュース観てたら、関東は今日が満開だって言うからさ。日中は人で溢れちゃうだろうけど、今だったらゆっくり見られるかなって。ほら、読みが当たって誰もいない」
「……そらいねーだろ」
まだ朝の六時半なのだ。さすがに場所取りも始まらないだろう。
宵は薄桃色に咲く花たちを眺める。
確かに美しいけれど。
「入学式でも卒業式でもない微妙な時期に咲いちまったな」
「でも、宵と一緒に見れて俺は嬉しいけどね」
そう言って、晃は宵の手をぎゅっと握った。

