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Memory of Night 2
第49章 エピローグ

それから二人は特に言葉も無く、美しい桜並木を歩いていた。
肩が触れるくらいの距離にお互いの体温がある。それがずっと当たり前だった。
物理的に距離が離れてしまってどんなふうになるのかまだ想像できないがーー好きな気持ちは変わらない。
きっと。
ふいに晃が立ち止まった。宵も足を止め隣を振り向くと、頬に手を添えられ口付けられた。
触れるだけの、ソフトなもの。そこから伝わるお互いの体温に安堵する。
晃は真剣な眼差しで言った。
「ーーちゃんと大学卒業して、医師免許取れたら、いずれこっちで自分の病院開業したい。だから、頑張ってくる」
宵は笑った。
「……立派すぎ。おまえなら、やりたいこと全部叶えられるよ。ーー大丈夫、ちゃんと待ってる」
そうして自らも晃に口付ける。唇を離した瞬間、晃の腕が背に回り、ぎゅっと抱きしめられた。
宵は晃の耳元で囁いた。
「俺も大学卒業するまでに、やりたいこと見つけるよ」
「そんなの、ゆっくりでいいんだよ。君はもっと遊べばいい」
その時だった。
突然強い風が吹いた。
桜の木が揺れ、枝から離れた花びらが空高く舞い上がる。
「……いきなりなんなんだよ」
「春一番かな」
二人は吹きすさぶ風に目をすがめ、上空を見上げた。
薄桃色の花びらたちが青空を背景に踊っている。
まるで絵画のような、美しい情景だった。
無数の花びらたちが二人の門出を祝福するように、ゆっくりと舞い落ちたーー。
おわり

