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フレックスタイム
第1章 午前7時の女
「リリィ、おはよ。
良かった。
リリィ、何処にも行かないで、
ケンと一緒に居て?」と、
いきなり私に甘えてくる。


「ケン、ダメだよ?
佐藤さんはお仕事あるし、
今日から新しいナニーが来るから」と社長が言うと、
ケンはたちまち泣き出して、

「ダディ、僕に意地悪言った。
やだ。
リリィ、ずっと一緒に居て?」と私にしがみついたまま泣くので、

「困ったわね?
男の子はそんなに簡単に泣いちゃダメよ?
強くないと、女の子を守れないじゃない?」

「女の子なんて、
すぐに泣くし、意地悪するから嫌い」

「えっ?
リリィも女の子なんだけどな?」

「そうなの?
だって、リリィは泣かないし、
意地悪しないよ?」

「泣かない女の子だっているのよ?
だから、そういう女の子を守ってくれる男の子じゃないと、
リリィは一緒に居たくないかもよ?」

「じゃあ、僕、泣かない。
泣かないし、リリィを守るから、
ここに居て?お願い」
と言って、
涙を拭いて、私のことをギュッとハグするので、
本当に可愛らしく思った。


「取り敢えず、お顔洗ってお着替え出来る?
リリィは、ケンのパンケーキ焼くから」と言うと、

「僕ね、1人で出来るよ」と言って走り出すので、

「ケン!お家の中では走らないで?」と、
昨日と同じことを言った。


「本当に佐藤さん、
すっかりケンと、仲良しだな」と言うと、
何か考え込んでいるようだった。


甘くないパンケーキを焼いた。

ケンには、小さいパンケーキを焼いて、
ケチャップでスマイルマークを描いてから、
ベーコンエッグとサラダを添えた。

社長と私は大きめのパンケーキにしてみた。


ケンには温めたミルクを、
社長にはアメリカンコーヒーを、
自分用にはミルクティーを淹れた。



擬似家族のようだと思った。
まさか、3人共、血が繋がってないなんて、
その時は知らなかった。
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