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フレックスタイム
第2章 秘書室へ
「キスもしない。
同意なしではね?
だったら、引き受けてくれるよね?」と言った。

やっぱり、策士だ。
結局、引き受けさせる方向に持ってくる訳だ。

ちょっと感心してしまった。


「じゃあ、月曜から秘書室に異動ね。
室長の伊藤は面識ある?」

「遠くからお見掛けしたことある程度です」

「良い奴だけど、厳しいかもな。
あと、お局が居るけど、
気にしなくて良いから。
伊藤の下につけるから、
俺と伊藤以外に何言われても、
聞かなくて良いから」

「はい。判りました」

「じゃあ、服が要るな。
ケンが起きたら買い物に行くか。
クリーニング屋がワイシャツ届けに来る時間かな?
代わりに今週分のワイシャツを渡すから」

「うわ。
ワイシャツ、クリーニングだったんですね?
昨日、洗ってしまいました。
洗濯機の横の袋に入ってたから」

「えっ?」

「さっき、アイロンも掛けちゃいました」

「大変だから良いよ?
俺、デカくてアイロン、大変でしょ?」

「プロに出した方が、ピシッとして気持ち良いですよね?
クリーニングに出し直しますか?」

「いや、今週のはそのままで良いよ。
せっかくやってくれたんなら。
ホントは業者のって、
パリパリ過ぎて好きじゃないし」

「ま、ユルっとしてるのより、
ピシッとしてる方が社長っぽいかもですね?」


「秘書となるとさ、
マスクは外して貰わないとな。
喉が弱いなら、秘書室と社長室に加湿器置くよ」と言うので、
何となく気持ちが重くなってしまい、

「あの…喉は確かに弱いんですけど、それより私…
目立ちたくなくてマスクしてるんです」と言った。

「目立ちたくないって?」

「色々ありまして…
とにかく静かにひっそりしていたいんです」

「ふーん。
でも、秘書は目立つ存在になるけど、
仕事と割り切って貰えるかな?」

「社命でしたら…
出来る範囲でやらせていただきます」と言って、
頭を下げた。

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