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フレックスタイム
第1章 午前7時の女
「なるほど。判りました。
ケンのお弁当箱はこの辺りのやつですね?
食材も…結構ありますね。
朝食は、シリアルが好きなんですか?」

「いや、俺が作れないから、シリアル。
お手伝いさんが居た時は、ちゃんとしたやつを食べてた」

「判りました。
じゃあ、明日は朝食とランチボックス、作りますね」と言うと、

「佐藤さん、料理、出来るんだ」と言う。

「まあ、前職は主婦だったので」と、苦笑いした。

「ふーん。そうなんだ」と言ったけど、
特にそれ以上は訊かれなかった。

「まあ、俺もバツ2だけどね」と、社長も苦笑いした。

「あ!
こんな格好で失礼しました!
おやすみなさい」と、慌てて私は頭を下げると、
小走りでケンの寝ている寝室に戻った。
パジャマ姿だったのを忘れていた。



翌朝、早めに起きると、
仕事に行く服に着替えてパジャマ等をバッグに詰めて、
キッチンに行った。

炊飯器のスイッチを入れて、
朝食を整えながら、お弁当を作り始めた。
ケンのと自分のを作った。
冷めたものを食べるので、
味のチェックもしたかったし、
普段もお弁当だったからだ。
バッグには昨日会社で洗って乾かしておいた曲げわっぱのお弁当、入れっ放しで良かった。


「おはよう」と社長がキッチンを覗き込むので、
「おはようございます。
社長も朝食、召し上がりますか?
あ、ケンを起こして来てください」と言って、
ご飯とお味噌汁、オカズのプレートを準備した。


ケンが泣きながら社長に抱かれて連れて来られた。

「ケン、おはよう。
どうしたの?」と言うと、

「リリィ、居なくなったと思ったの」とベソをかくので、

「リリィにおはようのキスをして?」と言うと、
社長に抱かれたまま、
手を伸ばして私の頬にキスをしてくれる。


「お着替えは?
1人で出来るの?」と言うと、

「出来るよ?」と言いながら、
社長に「降ろして。お着替えしてくる」と言って走って行くので、

「お家の中で走らないで?」と声を掛けた。



「ありがとう。
いつも、朝、グズって大変なのに、
佐藤さん、凄いな」と社長が言う。


「これ、運んでいただけますか?
お着替え、見てきますね」と言って、
ケンを追い掛けた。
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