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そぶりをやめて
第7章 117日
「見てろよ?近いうち、腹筋バキバキのマッチョに」

ムキムキマッチョな佳佑を想像して、笑えてしまう。

「え〜、やだなぁ」

そう零すと、首すじの辺りに顔を寄せていた佳佑が、ふと止まってこちらを見る。

「え?マッチョがタイプなんじゃないの?」

「...違うけど」

どこ情報?
そんな事を言った...、かなぁ?
いやいや。言ってない言ってない。


汐里の好みは、黒スキニーが似合う細身のバンドマンタイプだ。
マッチョが好きとは言う訳ない。

「えーーー。なんだよ〜。マッチョが好みって聞いたから、頑張ってたのに...」

は?え??
そうだったの???

「前より、全然今のがカッコイイよ?」

期せずして、カッコイイとか言っちゃった。
でもまだ佳佑がワザとらしく、しょんぼりしている。

「マッチョは嫌だけどさ、腹筋が軽く割れてたらステキよね!」

なんでこんなフォローをしないといけなくなったのだ。

「じゃ、頑張る...」

「うん。がんばって」

半裸で、なんなのこのシチュエーション。

「頑張るから、キスして」

ん?

「めちゃエロいやつ」

んん??


最近の佳佑は、いつぞや「好きだよ」とかホザいて以降、なにがオカシイ。

今みたいに甘えてきたり、愛を囁いてみたり。
朝、玄関まで見送って欲しい、と駄々をこねてみたり。
スキンシップが足りないと、軽くキレてみたり。

汐里は密かに、佳佑が“新婚ハイ”になってしまったと思う。

舞い上がって、テンション高くなって、きっと我を忘れてる。

もう15年ほど前になるが、汐里の同級生『ゆーな』こと優奈もその“新婚ハイ”になった。
同級生の中で一番に結婚することになって。
しかも、相手が地元でちょっと有名な、モテてた先輩で。
冷静な周りから見ると、テンションが上がりまくってはしゃぎまくって。
当分、目も当てられない状態だった。

それを間近で見たから、佳佑の今の状態もきっとそれ。

このテは、反対や反論は受け付けない。

自然と治まるのを待つのみ。



仕方ない。

佳佑の膝を跨ぐようにして、ソファに膝立ちする。

視線を合わせると、がっつり両手で頭を掴み、ゆっくりと唇を寄せた。
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