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蒼い月光
第6章 くのいちの関門、初枕

「うむ…わかった」

首領が重々しく了承した。

「疾風‥‥面(おもて)をあげぃ」

疾風が命令どおりに、おずおずと顔をあげた。

「疾風よ‥‥よいのだな?」

それが朱里の乙女を
散らすことを意味していることを
朱里自身も理解した。

疾風が答えるよりも先に

「お願いします。
私のくの一出世の為に
初枕をしていただきとうございます」

朱里は鬼気迫る勢いで声を発した。


「わかった‥‥疾風、お前は下がってよい」

これは、引き受けたから
お前はもう帰れということを意味していた。

「何とぞ、朱里をよろしくお願いします」

では、これにて御免…
そう言って疾風は立ち去った。

立ち去るほんの一瞬だけ、
親子は目と目で言葉を交わした。

『さらばじゃ』

『ありがとうございました』

もっと見つめていたかったが、
首領の言葉が二人を引き裂いた。

「朱里と申したな?ついて参れ」

首領の後ろについて行くと、
湯殿に案内された。

「脱げ‥‥湯に浸かり、垢を落とすがよい」

命じられて帯を解き始めると、
男もまた、作務衣を脱いで裸になった。

恥ずかしさのあまり顔を伏せ戸惑っていると、
手を引かれて湯船に浸からされた。

「恥ずかしがることはない。
これから互いに体の全てを見せ合い
交じり合うのだから‥‥」

朱里は体の火照りを感じた。

それが湯の熱さのせいなのか
男に抱かれる期待と不安からなのかは
わからなかった。


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