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蒼い月光
第7章 今成貞虎の寵愛

くの一となった朱里は
今成(いまなり)家に仕えるようにとの命令が下された。

城主の貞虎(さざとら)は朱里を一目で気に入り、
常にそばに置いた。

「よいか朱里、そなたと儂(わし)は一蓮托生だ。
命がけで儂(わし)の命を守り抜け。よいな?」

「は!この朱里、命を賭けて殿をお守りいたします」

当初こそ、主従関係であったが、
やはり、そこは男と女。
そんな二人に恋慕が芽生え始めるのは時間の問題だった。


ある日、貞虎はウサギ狩りに行くと言い出した。

朱里の為に馬を用意すると言ってくれたが、
朱里は馬に乗れなかった。

「なんと!お前は馬に乗れないのか?」

忍びとしての唯一の欠点であった。

貧しい家庭には馬を飼う余裕などなかった、
父の疾風もその事を危惧して、
朱里の脚力を徹底的に鍛えた。
その脚力は馬よりも速く、遠くまで走れた。


その事を貞虎に伝えたが
「いやいや、馬に乗れた方が
戦術が広がると言うものだ」と
馬術訓練を実施すると言い出した。

貞虎の愛馬に二人乗りして城をでた。
鞍に朱里を座らせ、貞虎は馬の背に直接跨がった。


「よいか、しっかりと馬の首に抱きついておれ」

貞虎は朱里の脇の下から手を伸ばして
手綱を握った。

付き人として三人の家臣がそれぞれの馬に乗り、
後を追いかけた。

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