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第27章 Winter songs

ううううううう。恥ずかしいものね。自分の求愛ダンス見るって。

1本目はルンバ始まる直前からだった。

踊る私たちの全身が画面いっぱいに丁度収まるよう撮られているから、

表情なんかも割と分かりやすい。

うわ。私すんごい顔。泣き出しそうな顔してる。

そうよ、この時。

私決心したんだった。

その時の感情がまた蘇ってきて涙が滲んでくる。

この初恋をきれいに胸に仕舞おうと決めて、精一杯の愛を彼に送ったんだ。

フロアを退場し、彼と手が離れる瞬間までが私の初恋期間だと。

そして、偶然にもこの動画は。

彼と手が離れる瞬間で終わっていた。

涙を拭きながら、2本目のＵＲＬを入力する。

ああ、この動画をＵＰした人はダンスしている全身も撮っているが。

編集して時折おりの表情を切り取りワイプ入れてる。

ほぼ序盤から撮られている。

ステップや振り付けの意味の解説までつけてる。

朝比奈さんの表情、本当にあの絵本のナルキッソスみたい。

あの絵本のナルキッソスより、大人の男性の色気があるけれど。

とても紳士的な優しい表情をされる。

ふふ、恥ずかしい。私、頬染めて嬉しそう。

実際嬉しかったもの。

彼の完璧なまでのエスコートでステップもターンもキレイに決まっていく。

久しぶりの社交ダンスで、しかも大好きな人のエスコートで。

彼に恥をかかせることなく踊れることがとても嬉しくて、楽しかった。

カン取り戻すのも早かった。スイッチこの辺で入ったんだろうな。

朝比奈さんの表情も、だんだん楽しんでる感じになって来てる。

そう、目が合った時には優しく微笑んでくれていたもの。

言葉、なくても次の動きお互い理解していたもの。

ルンバが始まる。

この動画の人はルンバ時には常に私たちの表情をワイプに入れていた。

ああ、恥ずかしい。

こんな小娘が大人の男性に全身で愛を乞う姿なんて。

でも、この小娘は紛れもなく私。

今の私の精一杯の愛情表現。

色気もへったくれもないけれど。これが、わたし。

彼は。

きちんと流れに沿った男性の振り付けをしてくれている。

そう、思う。

でないとこのダンスは成立しないから。

求め、応え、応え求める。そういうダンス。

だから、苦しそうな切ない表情になる。

相手を乞い求めるから。