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離島性体験 〜M男君〜
第1章 僕はこの街にすみ続ける
あれ?いつだったかなぁ?

そう思っている玉城卓郎は倉庫にいた。









「たくろう、2回目だろ早く済ませて来いよ」

「はいよ。」

玉城卓郎(たましろたくろう)この町に住み始めて36年の月日がたっている。

9月なのにまだ蒸し暑い日が続いて、雨が降ったり止んだりしている。世界中の人たちがマスクを手放せない時代に、この町は長い夏の蒸し暑さのせいで耐え難い苦痛に感じてしまう。

ざぁざぁ~ザワザワ〜

(そういえばあの時もスコールみたいに急に雨が降ったんだったよなぁ。)

そう呟く卓郎だった。

ゆっくりフロントガラスに落ちる小さな雨、ワイパー越しに見えるさとうきびも台風前の雨に打たれて重く葉が垂れている。

そんな風景が見える国道を白いボディに赤く錆の入った軽トラックで走る卓郎だった。

「レクサスに安いベンツ、最近はアルファードぐらいの高級車も見るよな。誰なんだろう・・知り合いじゃないよな、、、」

ジュースポケットの缶コーヒーを一口飲んで煙草を加えた。

「この町で高級車って目立ちすぎる。ランボルギーニとかフェラーリとか走ってたら追いかけられるぞ。まじで。この町の連中は人見知りって言葉知らないから。」

「トラクタのランボルギーニなら目立たないかも。よく働くし。一番目立つか。受ける(笑)。おっ」

卓郎は加え煙草を落としかけ目線を外に向けていた。

「今すれ違った車の女の子、めっちゃ可愛かった。黒のハコバンで赤の装飾してた。どこの子だろう。」






この町では車ですれ違う度に可愛い女の子を探す。ってそうじゃなくてそれは卓郎みたいなおやじ。知り合いばかりのこの町では運転中も人の顔を伺わないと後でこう言われるのだ。

「この前、車ですれ違ったの気づいてました?」

そう言われたくないから運転席の窓ガラス越しに手をあげる男性。会釈をする若い女子。どこで誰と繋がってるか、見られてるかわからない。正直、顔と名前を覚えるだけでもこの町で暮らすのは超たいへんだ。

それでもこの男はこの町に住みついた。
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