この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Kiss Again and Again
第10章 裏切り
でて・・・ おねがい・・・ 祈るような気持ちで電話した。
「あゆ?」
いつもと変わらない日常的なはっきりとした声に 力が抜けて また座り込んでしまう。
「じゅん・・・ たすけて・・・」
「あゆ? 今 どこ?」
「中目黒の駅」
「20分で行くからっ。 そこから 動かないで」
言われたことの意味がよくわからないながら 人目もはばからず 泣きじゃくりつつ 座り込んでそのまま待った。
「あゆ?」
背中に手がおかれ 純子ちゃんが隣に座っているのに気がついた。
「車まで 歩ける?」
純子ちゃんに肘を支えられ 待っている車まで連れて行かれた。
運転席には 見覚えのあるような顔立ちの男の人が座っていた。
「あ・・・ ごめんなさい・・・ デートだった?」
「ううん。 紹介するね。 兄のタツキ。 たまたま近くにいたから そのまま来たのよ。 あゆ・・・ 大丈夫?」
純子ちゃんに似ているから 見覚えがあるような気がしたんだ。
「初めてお会いするのに こんなみっともなくて・・・ ご迷惑をおかけして・・・ ごめんなさい・・・」
涙は いつまでたっても 止まらなかった。
「そんなことはいいから」
純子ちゃんに支えられ 後部座席に 乗り込む。
それっきり スマホの電源は 切った。