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Kiss Again and Again
第21章 はじまりは こんな風に

 わたしが起き上がると 海は近づいてきた。
 「大丈夫? 気分が良くなったら サンドイッチを食べる?」
 「いえ・・・ もう帰ります・・・ ごめんなさい。 押しかけたりして」
 「そんな言い方をしないで。 あゆがせっかく来てくれたのに こんな目に遭わせて ごめんね・・・」
 「ちょっと気分が悪くなっただけです。 トイレ 汚していませんでしたか?」
 「掃除したばかりでよかったよ。 あゆが来るって言うから トイレだけは大急ぎで掃除しておいたんだ。 よかった・・・」

 その言葉に ちょっと笑った。 以前は 海の部屋を訪れると 一番にトイレ掃除をしていたものだ。 「男所帯のトイレは不潔」 言葉にできなかったから 「宿泊料」とか言い訳して。 ともに過ごした時間は 海の中にも残っているのだ。

 「お願いだから まだ帰らないで。 もう少しで終わらせるから」
 終わらせる・・・って 何を?
 「スモークサーモンとピクルスのサンドイッチは作っておいたから。 おいで。 紅茶を淹れてあげよう」
 「あっ・・・ そんなこと・・・ 本当にごめんなさい。 お邪魔するつもりでは・・・」
 「邪魔してるとか 思っていないから 謝らないで。 少し待ってくれたら 一緒にサンドイッチを食べよう」

 本当は もう帰りたかった。 でも 帰ってひとりになったら 惨めな時間が待っていることもわかっていた。
 「じゃあ 紅茶はわたしが淹れます」

 この嘘つき男に付き合うつもり?

 「何がどこにあるかわからないでしょう? 僕がやるよ」

 そうね。 優しいフリが上手。

 海は 魔法のように ティーポットと未開封の紅茶缶を取り出した。
 「ティーポットがあるの?」
 「いつか あゆと飲もうと思って 買っておいたんだ」

 そして わたしは すぐに騙される。

 ティーポットもティーカップも新しいものだった。
 「for you for me for the pot でしょう?」 

 なぜ こんなことに心を動かされるのかわからないけど 安らぎがもどってきた。

 両手でカップを持ち その温かさを味合った。
 目を閉じると 白い陶器に細い蛇のように置かれていた髪の毛が浮かぶ。 わたしに見せるために そこにあったのだ。 わたしを傷つけるために 怯ませるために あった。

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