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Kiss Again and Again
第11章 兄 妹
どうして こんなに泣き虫なんだろう。 泣いたって 何にも変わらないのに。 いつも 泣いてばかり・・・
また 電話が鳴り始めた。 電源を切ってしまおうとして・・・
えっ・・・ 「たつき」とある。
えっ? 樹さん? 電話なんか 登録した覚えはないのだけど。
おそるおそる電話に出る。
「たつき・・・さん?」
「どうしたの?」
「えっ・・・?」
電話 かかってきたのよね。
「今ね あゆちゃんのマンションの前にいるんだ。 レインボーブリッジを見に行こう」
「マンションの 前?」
「そう。 ドライブしよう」
バルコニーに出てみると 確かに樹さんの車が停まっている。 ライトも灯さず うずくまるように。
「せっかくだけど・・・ 今日は・・・」
「せっかく来たんだから ドライブしよう。 僕は 朝までだって 待つよ」
朝・・・まで・・・?
この人だったら やりかねない。
冷めたコーヒーを しばらく見つめた。
これからすることは・・・ 泣きながら眠ること。
不実な男を 怨んで 罵って 自分を哀れみ 呪い ・・・泣く・・・
もっと ましなこと しなくては。
「もう少ししたら 降りて行きます」
あらん限りの気力を振り絞って 顔を洗った。 何となく 服を着替えトワレを着けた。 少しだけ しゃっきりした。
マンションを出ると 樹さんは 車の側に立っていた。
「よくきたね」 助手席の ドアを開けてくれた。
深みのある声に めまいがする。