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Kiss Again and Again
第3章 ジャズダンス
なぜ その日のその時 ひとりでフロアにいたのか 思い出せない。
オーディションの発表の日で 大塚スクールからは3人応募出場していた。 唯一岡野さんだけが 一時審査に受かったらしい、と 誰かが言っていたのは覚えている。
その日は がっつり練習するつもりはなく 軽く身体を動かしておこう、くらいの気持ちだった。 だからバレエシューズをはいていた。
「やぁ 白鳥さん」
日向さんが入ってきたのに 気がつかなかった。
もう帰るつもりだったから 「おつかれさまです」 そのまま更衣室へ向かおうとした。
「オレが来たからといって 慌てて帰ることはないだろう?」
いきなり 腕をつかまれて 驚いた。
「はっん ほっそい手だなぁ。 こんなもの 簡単にへし折れそうだな」
得体の知れない恐怖が 足元から 全身に広がった。
つかまれた腕を勢いよく引っ張られ 壁に背中がぶつかり あまりの強さに反動で 日向さんの胸に ぶつかった。
「おれに 抱いて欲しいってか?」
身体を抱かれたまま 壁に押し付けられた。
恐怖で 声を挙げようとするのに 咽喉からは 空しく息が吐き出されるだけだった。 「はぁーーーーっ はぁーーーーっ」 それは わたしを絶望に突き落としそうだった。
いきなり 腿を抱え上げられ そのまま床に仰向けに倒れ したたか頭をぶつけた。 一瞬 目の前が真っ暗になった。 気を失ってはいけない、と 心が叫ぶ。
「やってほしいんだろう?」
背中と足で後ずさるところを 足をつかまれた。 気が遠くなりながら バレエシューズの裏に 人間の顔の 骨とぐにゃっとした肉の感触を感じた。
「おいっ なに やってんだっ」
誰かの声が聞こえた。
「たすけて・・・」
「おいっ」 「だいじょうぶかっ・・・」 「おいっ・・・」
そのまま 気を失った。