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Kiss Again and Again
第16章 最後の扉
「就職 決まったでしょう。 お祝い しなくっちゃ」
樹さんから 久しぶりに電話がかかってきた。
ラインでの連絡は 取り合っていた。 わたしは 実際以上に忙しそうなフリをして 真実忙しい樹さんからのお誘いを ことごとく断り続けていた。
”わたしと逢っていたら 樹さんはもっと忙しくなる” それが理由だった。
何が不安なのかは もうわかっていた。 それを理由にするわけにはいかなかった。
「ありがとうございます。 でも お気持ちだけで・・・」
「もう予約してあるから。 今日くらいは 僕につきあって」
今日・・・ 本当は 今日だけじゃあなくて もっとあなたといたい。
「ありがとうございます。 じゃあ お食事だけ」
「そっかぁ。 食事だけかぁ」
・・・それ以上は 心が壊れます。
大学まで迎えに来てくれると言うのを断れなかった。 声を聞くと 樹さんという人が 現実になってしまった。 もう 心は 樹さんへと向かって準備しはじめていた。
逢いたい。
酸素が必然で不可欠であるように 深い声が 樹さんのかけがえのなさを思い出させた。
逢いたい。 酸素がなければ 生きられない。
「3時過ぎになるけど それでもいいですか?」