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Kiss Again and Again
第17章 別れのとき
樹さんにきれいにしてもらい 向かい合って抱擁しながら
「こんな狭いベッドで 眠れますか?」
樹さんのベッドの半分くらいしかない。
「もっとくっつけば 狭くないよ」
なんて気持ちのいい抱擁だろう。 そしてこの胸毛 柔らかくて気持ちいい。
「キリマンジェロが見つかって よかった・・・」
「本当に そう思ってる?」
「登る山が見つけられない人だっているのに」
「それを 目を見ながら 言って」
「いや」
「そのいやは嫌い」
いっそう胸毛に顔を埋める。 これを 失う。
「泣くから いや」
朝まで 抱き合ったままだった。
目が醒めて 最初に見たのは 樹さんの胸毛だった。
樹さんを起こさないようにベッドを抜け出し シャワーを浴びていると
「おはよう」
ドアを開けて 何も着ていない樹さんが入ってきた。
「おはようございます。 裸族の酋長さん」
慈しみながら お互いの身体を洗い 穏やかに コーヒーを飲んだ。
会社まで送ってくれるという樹さんの申し出を 「車の混み様が予測できないから」と断り マンションの前で別れた。
最後に見た樹さんの目は 悲しそうだった。
多分 わたしも 同じ目をしている。
「いってらっしゃい」
あなたも いってらっしゃい・・・
夜が終わると なぜか いたたまれないような悲しい気持ちになる。