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Kiss Again and Again
第17章 別れのとき
数歩 あるくと 振り向いた。
手を 振らなくては・・・
小さなボストンバッグを ぽすんと落とし 大きく手を広げた。
「おいで」
これから失う深い胸に 飛び込んだ。
泣いた。 泣きじゃくった。 「いやだ」と叫びたかった。
全身を包み込む力強い抱擁だった。
「一度も ”いかないで”とは 言ってくれなかった」
「言っても・・・ よかったの・・・?」
髪を頬ずりする樹さんの頭が かすかに うなづく。
・・・・・・
いかないで いかないで いかないで・・・ おねがい・・・
おいていかないで
そばにいて
その声が聞こえたかのように キスがおりてくる。
愛にまみれた キスだった。
いなくなる男は 心に楔を打ち込むために キスするの?
ああ・・・ この唇を このキスを 失うのは いやっ・・・
「これからは どんなに泣いても 僕は涙を受け止めてあげられないから・・・ 泣かないで・・・ もうなかないで・・・」
ゲートを抜けると 一度だけわたしを見て 一度だけ 高く手を挙げた。
身体が鉛のように重たくて 手を挙げることすらできなかった。