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Kiss Again and Again
第18章 再 会
「あゆぅぅぅぅ・・・」
翌週の金曜日の夜 11半時過ぎに インターフォンから聞こえてきたのは 海の声だった。
「あゆぅぅぅ・・・ あけてぇぇぇ・・・」
「海・・・ 何時だと・・・」
「あゆぅぅぅ・・・ むかえにきてぇぇぇ・・・」
珍しい。 酔っているようだ。
「あゆぅぅぅ・・・ あけてぇぇぇ・・・ むかえにきてぇぇぇ」
ロックを開錠しても 海の酔っ払った声は止まない。
「そこに行きます」
エントランスには 壁に寄りかかり かろうじて立っている海がいた。
「どうしたの? こんな時間に」
「あゆに あいにきたんだよぉ・・・」
「こんなに 酔って」
「酔わないと 来れないから。 よかったぁ・・・ げんきそうだぁ・・・ 心配してたんだよぉぉぉ」
海は 首に抱きついてきた。
「追い返さないで」
このまま 放っておくことも 追い返すこともできなくなっていた。 恋愛感情があるわけではない。 ここのところ海がしてくれたあらゆる善意のせいだ。 それらが積み重なって わたしを がんじがらめにしている。
蜘蛛の巣の糸のように。
海に肩をかして 抱えるようにし よろめきながら 部屋までもどった。
どうにかラブチェアに座らせると 無意識のように 自分で上着を脱ぎ ネクタイをゆるめている。 完璧な姿しか知らないから こんな海に ふっと心が緩む。 痛々しいようにも思える。
樹さんは 好き好き攻撃で 蜘蛛の糸を張り巡らせた。 わたしは 簡単に捕えられた。
海は 善意と失意で 糸を張り巡らせようとしている。
こんなことに 捕まるものか、と 気持ちを奮い立たせるのだけれど。