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Kiss Again and Again
第19章 恋愛事情
首都高を抜けた 観光バスが沢山停まっている最初のサービスエリアで コーヒーを買った後 運転を代わった。
「じゃあ 僕は 寝させてもらうとしよう」
「そんなの だめっ。 ちゃんと起きててください」
「あゆ サングラスする?」
そう言うと かけていたサングラスを わたしにかけてくれた。 親密すぎる仕草だ。
「ああ・・・ やっぱり大きいね。 ここで買って行く?」
「なくても 大丈夫です」
やっぱり買っておけばよかったと 後で後悔した。
海の言うことは 大抵正しかった。
雪をまとった富士山に向かって 車を走らせた。 記憶通りに 海は 話題が豊富で 会社の嫌味のない噂話なんかを楽しませてくれた。
どんどん富士山は大きくなってゆき わたしは 海と過ごすことに慣れていった。
そして 時折 樹さんとの旅行を思い出していた。
「どうして あの部屋には 何もないの?」
「何も 必要ないから」
驚いて 海を見た。
「初心者は ちゃんと前を向いて運転しないと」
「ごめんなさい・・・」
「嘘だよ。 あゆは充分上手だよ」
「寝に帰るだけだから。 人が訪ねて来たのだって この前あゆが来たのが初めて」
「だって・・・ お休みの日は?」
「うーーーん。 どうしていたんだろう・・・」
海・・・ 大丈夫?
「あまり部屋にいないかな」
そっかぁ・・・ もてる男だものね。
「もてるから?」
えっ? 声に出てた?
「そう思ってたでしょう?」
「いいえ。 滅相もございません。 休日出勤は大変だろうなぁ、って思っておりました」
「うん。 それもあるし デートもある。 仕事でも もてる男は大変なんだよ」
同じようなことを言っているのに この前のような悲壮感がない。 軽い冗談に聞こえる。