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抱き屋~禁断人妻と恋人会瀬
第16章 九谷柚葉 18歳④どスケベ抱き枕妻
 朝食の膳は、カマスの一夜干しを狐色に炙ったものが出た。小魚を食べるための特徴的な口を持っているこの青魚は、晩秋から初春に向けてが旬で、霜降りと言われるほど脂が乗るのだ。

 新鮮な身で作った一夜干しは、軽く炙るだけで、海水の旨味そのものの塩味を蘇らせる。香ばしく脂が焼ける香りに、朝から気持ちが浮き立つ。出来のいい干物一枚で、これほど白米がすすむとは思わなかった。

 小鉢の大根の粕漬けには、柚皮を細かく刻んだものが散らしてある。柑橘の香りの爽やかさだけでなく、とろりと甘めの味付けを、柚子の酸味と苦味が味を引き締めているのが心憎い。

 さらに味噌汁は白味噌仕立ての蕪であった。葉まで柔らかくとろとろに甘く煮込んでいて、合わせた白味噌がポタージュスープのように濃い。

 実に行き届いた純和風だ。

「今朝のご飯も美味しいよ。…柚葉は、家事が行き届いているね」

 と、佐伯がほめると、

「そんな…普通です。身の回りのことはすべて、この屋敷に住んでいた祖父母に教えられましたから」

 柚葉は、顔を赤らめて口元を綻ばせた。


 病弱なためもあったろうが、やはり、素質を見抜かれていたのだろう。名だたる美術家であった祖父が特に手元に置きたがり、まるでこの屋敷の精のように、柚葉は育てられたのだ。

 その祖父が病気療養中の今は、この屋敷にある貴重な蔵書や美術品、骨董品のあらましは、柚葉にしか管理することが出来なくなった。

 今ではウェブを通して柚葉が、海外からの収集家からの問い合わせに答えるくらいである。
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