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女流作家~君を愛すればこそ~
第11章 雅彦と芳枝

予想通り芳枝は妊娠した。

十中八九、あの短大の准教授の子であろうけども
雅彦の子でもある可能性は
無きにしもあらずだった。
なので芳枝は堕胎しなかった。

待ち望んだ妊娠なのだから
何がなんでも産もうと決心していた。

妊娠を雅彦に告げると
誰かと密通していていたなどと
これっぽっちも疑わずに
涙を流して喜んだ。
不思議と芳枝が懐妊すると
あれほど激しかった女遊びがピタッと止まった。

日に日に大きくなるお腹を擦っては
お腹の中の胎児同様に
雅彦もまた日にちを重ねるごとに
父親の顔になってゆく。


そして出産予定日通りに芳枝は桐子を出産した。

産まれた赤子を見て
「俺に似てないなあ
でも、芳枝に似て良かった。
この子はベッピンになるぞ」と大喜びした。

『私に似ていて良かった…
あの先生に似ていれば、
この子の顔を見るのが辛いところだったわ』

芳枝と雅彦の愛情を受けて
桐子は素直な良い子に育った。

ただ、二人とも国語が嫌いなのに
なぜか桐子は日本文学を好んだ。

おそらく、あの准教授の遺伝子が
そうさせたのだろうと思われたが、
まさかその遺伝子が
将来的に小説家として花開くなんて
これっぽっちも予想しなかった。

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