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キャンバスの華
第1章 上京

「絵で飯が食って行けると思うのか!
そこまで意固地になるのであれば
お前など、もう息子でもなんでもない!!」

そう言って父は
次郎を勘当にしたのだったのだった。

部屋で風呂敷に当面の下着や
上着を包んでいると
長兄が部屋へ入ってきて
銭の入った袋を次郎に握らせた。

「ある意味、自分の思いを押し通せる
お前が羨ましい」

長男であるがゆえに
家長である父に口ごたえなどできず

父が決めた人生のレールを
しずしずと歩むしかなかった兄であった。


「そんなに高額の金銭は用意できなかったが、
それぐらいあれば2,3日は
飯を食えるだろう・・・
その2,3日で頭を冷やし、
父上に頭を下げに帰ってこい」

長兄もまた絵かきで
飯を食っていけるほど
容易い道ではないと思っていた。

次郎は頭を下げ、
黙って銭を握り締めて家を飛び出した。

兄の進言を踏みにじるようで心が痛んだが、
次郎は二度と家に戻るつもりはなかった。

ただひとつ心残りなのは
幼馴染の千代のことだった・・・

次郎は家を飛び出したその足で
千代の家に寄った。


「いったい何があったのでございますか?」

旅仕度の次郎の姿に驚きながらも、
二人はいつもの逢瀬に使っている畑の納屋に
腰を下ろした。


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