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シャイニーストッキング
第20章 もつれるストッキング4     律子とゆかり
 94 トライアングルブルー(2)

 ちょうど彼女達が常務室に入ってきた時は、入り口に対して背を向けて林田社長と電話をしていたタイミングであった。

 そして話しをしている後ろから…
『どうぞお入りください』
『失礼します…』
『佐々木室長様初めまして、大原常務専属秘書を承っております…
 松下律子と申します…』
 という、ゆかりと律子の微妙な、そしてお互いを探り合っているかのような声音の会話の声が聞こえてきていた。

 そして一瞬の間があった感じの後に…
『さぁどうぞこちらへ…』
『あ、は、はい、失礼します…』
 ゆかりと律子の緊張感の感じる微妙な間と声音の会話が続いて聞こえ…
 どうやらソファに座った様であった。
 
『え…と、皆さんコーヒーでよろしいかしら?』
 そして続けてそう聞こえ…
 このゆかりと律子の微妙な間や声音の会話が、ある意味、二人の攻防戦の様に聞こえ、いや、感じ、思えてしまって、背中が強張る感覚に陥ってしまう。

 だが、すると…
「お姉さん、あ、いや、ま、松下さん、わたしが煎れますよぉ」
 そんな一転した穏やかな、越前屋朋美の明るく朗らかな声が聞こえ…
「あら、いやそんな、越前屋さん、今日はお客様なんだから…」
 そして律子もその越前屋の声に少し緊張感を緩めた様な声音で返してきたのだ。

 おや、越前屋くんも来ているのか…
 私はそんな彼女の存在感に少し、いや、かなりホッとする。

 本当に、いつも彼女には和まされている…
 そして背中越しにもそんな彼女の明るさに、この場の張り詰めた様な緊張感のある空気が一瞬、緩んだ様にも感じられたのだ。

 そんな少し穏やかな空気感となり、律子は給湯コーナーへと歩み、このタイミングで林田社長との会話が終わった私は…
「やぁ、ごくろうさん、わざわざすまないな」
 そう言いながら、おそるおそる後ろを振り向き…

 佐々木ゆかり…
 蒼井美冴…
 越前屋朋美…
 の、三人の顔を見た。

 あっ…
 
『あ…は、はい、いえ、いや、システム情報部に来ていましたから…』 
 私は、そう返してきたゆかりの顔を見た瞬間…
 一気に心を揺るがせ、騒つかせてしまったのである。

 いや、そのゆかりの顔を、目を、直視できなかったのだ…

 なぜなら、そのゆかりの目が揺らぎ、いや、なんともいえない色を浮かべていたから…



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