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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 1 秘書役

 7月30日水曜日午前9時15分

 ブー、ブー、ブー…
 出社をし、自分のデスクで今日の予定の案件をチェックしていると、大原部長からの着信バイブが鳴る。

 あ、部長からだ、何だろう、今朝話したばかりなのに…
 そう思いながら電話に出た。

「部長どうかしましたか」
「いやごめん、……こういう訳で夜に急きょ予定が入ってしまったんだが、一応秘書のきみに確認取ろうと思ってさ…」
 
 秘書のきみ、だって…
 ちょっと嬉しかった。

「あら…そうなんですか」
 少し声が上ずってしまう。
 そして昨日、部長の手帳のスケジュールを控えた自分の手帳を見る。

「…昨日の段階では今夜は予定ないですね、ただ…」

 少し試しに言ってみようかしら…

「今日の12時から14時まで空いてますが…」
 そう、ダメ元でランチの誘いをしてみたのだ。
 
「そうか、では課長とランチ会議の予定入れといてくれるかな」
「え…、はい、大丈夫です」
 思わず嬉しくて元気に返事をしてしまう。

「場所等は課長に任せるから…」
「はい、じゃ課長から追って連絡させます」
 私のデスクの周りの人の手前もあったのだ、電話ではわたしはあくまで秘書役に徹して会話をしたのであった。
 だが、もし、誰かがジッとわたしのこの会話の様子を見ていたら、多分、男関係とのデート等の会話をしているのではないか、と、分かる位に顔が緩んでいたかもしれなかったのだ。
 その位嬉しく、心が高ぶったのである。
 でも最近少しだけ、そんな自分に違和感を感じていたのだ。

 昔の自分はこの位でワクワクした記憶がない、何で最近は部長絡みの事を考えると、こんな感じになるんだろうか…
 それ程に彼を、部長を、好きになってしまったという事なのだろうか。
 この事を考えるとどうしてもこの想いに行き着いてしまうのである。

 もしかしてこれが愛なのか…
 わたしは今までこうまで男を愛した事がなかった、だから、好きという事は分かるのだが、好きと愛するという違いがよく判らないのだ。
 そしてその想いは例の、あの、黒い女、を意識し始めてから特に強くなった様な気がしてならないのである。
 心では完全降伏したのだが、どうしても意識をしてしまう事が止められなかった。

 そして明日はいよいよ、また、黒い女と面談をしなくてはならないのだ…






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