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胡蝶の夢
第6章  腐蝕 





彼女がわからない。



「…許してください」



眼前の彼女の声が掠れる。



「私の中から…貴方が離れないの」



大人しそうな顔をして、時折大胆な事を口にする。


僕が誰の鏡だって?


こんな境遇にまで堕ちた僕の中に何を見るというのか?


恵まれていながらにして自分の事を悲観するなんて嫌味なのか。


それとも本当に恵まれてなどいないとでも言いたいのか。



「許してくださいって…、何を?」



「それは…」



心が黒く塗り込められていくようだ。



「君が逃げた事?僕を謀った事?目を逸した事?監禁し続ける事?君の兄がしてきたことも全部?そんなもの…、許せる訳が無いだろう?」



「痛っ…」



掴んだ腕に力が入る。



「軽々しく〝許して″だなんて言うな」






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