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胡蝶の夢
第6章  腐蝕 





「詫びれば許されるだなんて思い上がるな…。所詮、お前たちにとってコレはその程度の事なんだろうさ」



両手を掲げる。


一時は手首から変色して腐り落ちるのではないかと思った。


赤紫の痣がまだくっきりと残っている。



「僕からピアノを弾くためのこの指まで奪うつもりだったのか?」



いっそ腕が無くなればもう縛られなくて済むとも思った。


けれどそれではピアノが弾けなくなる。


唯一兄よりも秀でていたピアノの才を失えば僕には何もない。


父に褒められるための才が何も無くなってしまう。


そうなればきっと、僕は僕自身に存在価値を見つけられないだろう。



「そんなっ……」



首を振る彼女の否定の動作がわざとらしく見える。






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