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胡蝶の夢
第6章  腐蝕 





痛いでしょう?


生きるって事は痛い事だから。



「血…綺麗だね」



悲哀の感情が纏わり付いて離れない。


皮膚や血管が決壊していく様をなんだかとても美しいものの様に思える。


裸足のままの僕の足には歩く度に無数の破片が突き刺さり、辺りは一層赤に染まった。


色の無い真っ白の部屋に水に混じった赤が浸食していく。



「自分ってさ、何だと思う…?」



「……」



無言のまま彼女はふっと身じろぎした。


真ん丸の黒い瞳が不思議そうに見上げている。



「君は何をもって君なの?」



「私っ…」



「何が君を君としているの?…君って生き物は何?」



ペラペラと口からこぼれ落ちる様に捲し立てると、彼女は困惑した表情になった。



「そんな事…考えたことも無い?」






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