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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
「どうせ明日には出て行きます。ご不満なら、次の帰省から他の家政婦を付けますので」
二人の会話は、やはり断片的に聞き取るのでやっとだ。
「待って」
「何か」
「あさひは、よく働いている?」
それが性的な意味であると、それまであさひ自身がどのように躾けられてきたかということからも、明白だった。
「貴女には関係ありません」
「売り手として訊ねているの」
「あさひは、小松原さんに買われて良かったと思います。貴女の元にいた頃より、今の方がずっと人間らしく暮らしているかと」
「あの子に人間らしさなど、不要です。落札された時点で、お客様の所持品だもの」
「そういうところが──…っ」
ドラマや漫画なら、友人の保護者がそうした発言をしていれば、本人に代わって咎めてやりもするのだろう。
今の彩月は、それに重なる。
しかし、リビングに志乃達はいない。彼女があさひの友人を装う理由はない。
昨日から、彩月の様子はおかしい。例の婦人会の翌日とは比にならないほど、彼女こそ彼女らしくない。