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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法


「冗談で見過ごせないような傷、増えてたなって。小松原さんって、そういうのはちゃんと診させるから」

「圭ちゃん達よりマシなので」

「ううん、それに、痩せた?お節介して申し訳ないけど、常連のご婦人がたや私達でさえあさひちゃんがいなくなって寂しいし、瀬尾さんはそれどころじゃないと思うの。あさひちゃんのために逃してあげたんだとしても、それで思いつめてることがあるなら、話だけでも聞けるわよ。当然、口外しない」


 あさひを好きだったのではないか。自棄になって、変態な客でも取ったのではないか。

 御室の想像力には頭が上がらない。だが、どれも不正解だと答える。


 真新しい傷があるとすれば、佳子が美影につけさせたのが大半だ。

* * * * * * *

 御室が闇市の話題を出した夜、佳子が彩月を呼び出した。


 地下は、夜になるとおどろおどろしさが増す。

 彩月が佳子に雇われた時、既にここは拷問に必要なものが揃っていた。どの部屋も一切の光を絶って、扉を開けた途端、咽せるような体液の匂いが襲いかかる。あらゆる責め苦に呻吟した女達の痛苦を染みつけてきた壁は、今に彼女らの悲鳴をこだまさせるのではないか。

 もっとも、佳子はこの瘴気をものともしないで、悠然と木箱に腰かけていた。
 彼女の傍らに控えているのは、もう一人の住人だ。その美影は、彩月と主人が濃密なキスを始めても、退屈そうにスマートフォンを操作している。
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