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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第8章 第三話【波の音】 予感 
 幾度も執拗に唇を重ねられ、幸は嫌悪と息苦しさに無意識の中に左右に首を振っていた。耳の奥に遠く潮騒の音が聞こえる。固く閉じた眼からひとすじの涙が溢れ、頬をつたい落ちた。
 海辺の夜は熱く秘めやかに更けてゆく。ひそやかな夜の底にあえかな吐息とくぐもった声が響く。熱い息遣いは夜気に散ってゆく前に、波の音に呑み込まれた。
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