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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第9章 第三話【波の音】 絶望の果て 
 打ち寄せる波の音がいっそう間近になった。幸は泣きながら浜辺に立った。ひんやりとした海水が素足を洗う。
―もう浩三さんに逢えない。
 深い絶望感が幸を支配していた。一体、どんな顔をして、良人に逢えるというのだろうか。自分は最悪の形で最愛の良人を裏切ってしまったのだ。最早、我が身は浩三の妻でいる資格のない女なのだと幸は思った。
 今夜、浩三の妻の幸は死んだ。心が死んだのならば、本当にこの現身(うつしみ)も葬ってしまうまで。
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