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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第22章 番外編第四話【轍~わだち~】 
 もしかしたら、祖母ははるか遠き日々、かつてこの海辺までわざわざ来たという祖父のことを思い出しているのかもしれない。
 祖母の視線の先には、小さな花器におさまった二本の紫陽花がある。昼過ぎに晶が庭先に立った時、祖母が摘み取っていた花だ。かすかに色づいた紫陽花が部屋の中にほの白く浮かび上がっている。恐らく祖母は紫陽花を見ているようで、本当は見ていないに違いない。
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