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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第1章  ~始まりの森~

「呼んで?」

 おねだりする子供のように言われると、サクナもその気持ちに応えたくなってしまう。

 それが、ルカの持つ独特の魅力なのかも知れない。

「…………ルカ」

 サクナは少し恥ずかしく、ちょっと申し訳なさそうに呼ぶ。


「ダメだサク、いつもの甘い声で呼んで?」

「声の指定まであるの?」

「うん、今だけな。で、チュッと口付けしてくれたら最高」

「な、そ、そんなこと出来ないよ」

「いいじゃん……できる事だろ?」

 サクナは「うっ」と、呻る。確かに出来ないことではない。やる気がないだけだ。

「ル、ルカ」

 緊張のあまりやや甘さを増した声で呼び、サクナはルカの唇に綿毛のように僅かに触れた。

 自分からするキスはいつもの何倍も緊張する。
 
 気持ちよさも何もない。
 ただ、恥ずかしいだけだった。


「終わり?」


「だ、だって…………やっぱり、無理」

 それでも、ルカは目を細め嬉しそうに微笑んだ。
 緊張がときめきへと変わり、頭がクラクラしてきそうになる。

「可愛いな、もうっ」

 と、ルカはサクナの唇を啄む、戯れるように何度も摘み、甘噛みし、サクナはじわわと緊張が心地よさに変わってゆく。

 気が高鳴る。
 だけど、心が落ち着く不思議な感覚。

 
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