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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第15章  誕生祭 ~舞踏会の華たち~ (前編)


「陛下……少し宜しいですか?」



 サクナが悶々としながらも躯を休めた後、衣服を着替え三人が執務室をでてすぐのことだった。

 貫禄のあるご老人、この国の宰相を務めるヴェロニッカが声をかけてきた。

 宰相は、サクナに目を少し向けるもすぐに陛下に視線を戻す。

 
「何? 後じゃダメなのか?」

「はい……コスモ国の事で少し……」


 宰相の言葉を訊いたルカは、繋いだ手を少し握り締めサクナに視線を合わす。


「サクごめん、ケイルとふたりで行ってくれる?」

「うん…………」


 それは別に構わないのだが、サクナは宰相の言うコスモ国の事が気になった。

 が、それを訊ける雰囲気でもなくサクナはケイルと一緒に森へ向かう。




 コスモ国とは八年前に和平を結んでいる。
 その和平は今も続いている。

 陛下が朝方、祈り姫と祭壇に向かうのは王宮の人なら知っていることだ。

 それでも宰相が陛下に会いに来て、コスモ国の事で話があるとなると、少なからずいい話ではないことが伺える。



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