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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第16章 誕生祭 ~舞踏会の華たち~ (後編)

サクナは大広間に戻るため踵を返す。
その時、夫人たちと不意に眼が合ってしまう。
ヒソヒソと、サクナを見て話をしている人達の多いいこと。
しばらくはこんな日が続くのだろう。
良くも悪くもサクナは今、王宮で話題の人物。
行動の一つ一つ全て見られている。
「姫様、この度はおめでとうございます」
その者はサクナの知らない男性だった。
王宮では、知らない人の方が多いので当たり前の事なのだが。
眼の前を塞ぐ男性は、黒のテールコートに銀の刺繍が施されていた。恐らくは貴族の息子なのだろう。
「ありがとうございます」
流石に少し疲れてきた。
なれないことと、常に見られていること。
「初めての舞踏会は如何ですか?」
「慣れないせいか緊張します」
当たり障りのない返答。
ほんのり笑顔も忘れずに。
「でしたら、庭でも見に行きませんか?」
湖に浮かぶ宮殿は、さぞかし美しい景色なのだろう。庭に誘うのが流行りなのかもしれない。
「すみません、少し疲れてたので」
しかし、サクナはやんわりと断りを入れる。
本当の事であるし、見知らぬ男性とふたりで庭を見に行くのは気が進まない。
「庭には休むところもございますよ、ここは人が多いからお疲れなのでしょう。静かな場所に行きましょう」
「あっ……」
いきなり声をかけてきて、強引に腕を掴み、躯を反転させられ来た道を戻るハメとなる。
「あ、お、お待ちください」
あまりのことに驚くも流石に失礼なのではとサクナは声をかけるも男性は聞く耳持たず。

