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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第16章 誕生祭 ~舞踏会の華たち~ (後編)

「悪いけど、逢瀬をするなら他の女性にしてくれるかな」
男性の前に突如現れたのは陛下だった。
ルカは爽やかな笑顔を見せながら、その男性に言った。
サクナはホッと胸をなで下ろす。
「陛下……逢瀬など……し、失礼しました」
その者は慌てた様子で走り去ってゆく。
「サク……間に合って良かった。どこか行くから心配するだろ」
「あ……ごめんなさい」
サクナが陛下の婚約者なのは承知のはず。
それを強引に連れ出そうとするのは、何かしらの目的がある。
あの男性が優しさで言った事ではないとサクナでもわかることだった。
────人のこと疑ってばかりで本当に嫌になる。
善意かもしれない。
だけど、サクナは王宮で嫌と言うほど人の裏を見てきた。
「疲れた?」
「うん……少し」
「帰ろっか?」
ルカは心配して言ってくれてるのはわかる、だが、舞踏会はまだ終わっていない。
「ダメだよ。ルカは……」
「言っただろ、お前の為ならどう思われても構わないって」
それではサクナが困ってしまう。
「じゃあ、俺も疲れた。今後の事も考えなきゃならないし。先に帰るけどサクはどうする?」
「ルカ…………」
「帰ろ、サク」

