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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第3章  ~偽りの気持ち~


 今更、それだけで不安になってどうする。
 サクナはグッと気を引き締める。

 祈り姫だから、その血筋だから。
 貴族の娘や補佐官のミモリたちは、そういう意味で言っていたのだと。

 サクナという自分ではなく、祈り姫である者を選んだだけに過ぎない。

 自分でも言った言葉だった。

 祈り姫じゃ無かったら。

 でも、自分は祈り姫なのだ。それは変わりないだからルカに選んでもらえた。


 初めからわかっていたことなのに。
 ルカの優しさも甘い言葉も全て祈り姫だから。

 マリーたちの言うように、祈り姫じゃなければルカは見向きもしなかっただろう。

 王族や貴族たちが、高貴な血であることを誇りに思うように、サクナもまた祈り姫であることを誇りに思っている。

 胸がモヤモヤと霧がかかる。
 だから、陛下に望まれた。それを嬉しく思っていた。

 なのに、その意味に気づき、心がざわめく。

 明らかに自分の中に矛盾した気持ちが芽生える。
 だが、それに気づいたからとルカを諦める理由にはならない。


 初めから……わかっていたこと。
 今更、掴んだ手を離すことなんて、できないのだから────


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