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官能短歌論
第1章 官能短歌論(1)
良い官能短歌の例を見てみましょう。
良い官能短歌とは、次の二つの要素が含まれたものだと私どもの結社では考えます。
◎ 短歌のどこにもわいせつ・卑猥な単語が使われていないこと
◎ 鑑賞者に鑑賞者自身の欲望・卑猥さを気づかせる巧みさを持っていること
(鑑賞者が、人にも知られたくなく、自分でも気づかないふりをして生きている自分の欲望・卑猥さを、歌によってあらわにされること)
次の歌をご覧ください。
★汚満湖(おま◎こ)の水面(みなも)に映る名月や締まりて光る汁ぞこぼるる
この歌はどこにもわいせつな単語は使われていません。それぞれのフレーズは、「汚さに満ちた湖の水面」とか、「湖がまるでギュッと締まったときに、名 月を照らしていた湖水が汁のようにこぼれる」としか言っていません。つまり、言葉の上では、どう頑張ってもここに「わいせつ性」を見出すことはできません。
それなのに、多くの人には、これが絶句するほどの卑猥な歌だということがわかるようです。それがわかるのは、鑑賞者のほうに単語をゆがめてとらえる卑猥 な知識や心、能力があるからにほかなりません。もしたとえば、「湖が地殻変動で閉じて、湖水が漏れたということだろう」などと読み取った人がいたとして も、それはそれでよいのですから。
良いエロ短歌とは、ごく普通の単語のつなぎ合わせだけで、鑑賞者の(鑑賞者自身が自分にあるとは思いたくない)卑猥な知識や心をあらわにし、引き出すような歌なのです。
★アヘアヘの口をひらけば垂れ流し上のヨダレも下のヨダレも
この歌も同じで、「ア」とか「ヘ」には、ただの文字以外の意味はありません。その証拠に、この擬音語を見たとき、ご自分の中にある卑猥な知識や心が反応 しないと断言する人もいます。それなのに、ほとんどの人は「アヘアヘ」に一定の性的な表情や声を思い浮かべるようですし、私自身にもそう感じられます。
「上のヨダレ」と「下のヨダレ」にも、何のわいせつな単語も使われていません。それなのに、多くの人は、これらが何を意味しているかわかると答えます。し かし、やはりよくよく考えてみれば、それがわかったのは、私たち歌人の言葉遣いの工夫そのものではなく、皆様(鑑賞者様)のすばらしい性的な想像力・鑑賞 力の賜物であって、それをこの歌がお手伝いしたにすぎないところが、興味深いところです。
良い官能短歌とは、次の二つの要素が含まれたものだと私どもの結社では考えます。
◎ 短歌のどこにもわいせつ・卑猥な単語が使われていないこと
◎ 鑑賞者に鑑賞者自身の欲望・卑猥さを気づかせる巧みさを持っていること
(鑑賞者が、人にも知られたくなく、自分でも気づかないふりをして生きている自分の欲望・卑猥さを、歌によってあらわにされること)
次の歌をご覧ください。
★汚満湖(おま◎こ)の水面(みなも)に映る名月や締まりて光る汁ぞこぼるる
この歌はどこにもわいせつな単語は使われていません。それぞれのフレーズは、「汚さに満ちた湖の水面」とか、「湖がまるでギュッと締まったときに、名 月を照らしていた湖水が汁のようにこぼれる」としか言っていません。つまり、言葉の上では、どう頑張ってもここに「わいせつ性」を見出すことはできません。
それなのに、多くの人には、これが絶句するほどの卑猥な歌だということがわかるようです。それがわかるのは、鑑賞者のほうに単語をゆがめてとらえる卑猥 な知識や心、能力があるからにほかなりません。もしたとえば、「湖が地殻変動で閉じて、湖水が漏れたということだろう」などと読み取った人がいたとして も、それはそれでよいのですから。
良いエロ短歌とは、ごく普通の単語のつなぎ合わせだけで、鑑賞者の(鑑賞者自身が自分にあるとは思いたくない)卑猥な知識や心をあらわにし、引き出すような歌なのです。
★アヘアヘの口をひらけば垂れ流し上のヨダレも下のヨダレも
この歌も同じで、「ア」とか「ヘ」には、ただの文字以外の意味はありません。その証拠に、この擬音語を見たとき、ご自分の中にある卑猥な知識や心が反応 しないと断言する人もいます。それなのに、ほとんどの人は「アヘアヘ」に一定の性的な表情や声を思い浮かべるようですし、私自身にもそう感じられます。
「上のヨダレ」と「下のヨダレ」にも、何のわいせつな単語も使われていません。それなのに、多くの人は、これらが何を意味しているかわかると答えます。し かし、やはりよくよく考えてみれば、それがわかったのは、私たち歌人の言葉遣いの工夫そのものではなく、皆様(鑑賞者様)のすばらしい性的な想像力・鑑賞 力の賜物であって、それをこの歌がお手伝いしたにすぎないところが、興味深いところです。