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揺れる心
第6章 秘密
「あの…海斗さんのお父様はどんな方なんですか?
お会いしたことなくて…」

「春樹様ですか?
奥様がお強い方だから、
我慢強いというか…
ちょっと冷たくてよくわからない感じもするような…。
あら、あんまり上手く説明出来ませんわ。
お子様の頃は、そんなじゃなかったのに。
こちらにいらしてたのは、
百合子様がいらっしゃった頃まででしたし。
その頃は、幸せそうなお顔でしたけど、
その後はいつも仏頂面で。
いつも、陸也坊っちゃまもご一緒にいらしてましたね。
陸也坊っちゃまも、自分のお母様より百合子さんに懐いてらして…。
百合子様は元々、大先生のご学友だったご高明な大学の先生だかお医者様の一人娘様で。
そのお父様とお母様が立て続けに若くして亡くなって天涯孤独の身になったそうで、
その後、旦那様と奥様が引き取って、
まるで本当の娘さんのように可愛がってらしたんですよ。
だから、陸也さんと海斗さんのお父様ともご兄妹のように育ったのに…。
春樹様がご結婚されて独立した後に、
まさか百合子様に手をつけて子供を産ませるなんて…!
あら、やだ。
私ったら、お喋りが過ぎましたわね」と、言葉を止めた。


「百合子様は大人しい方だったから、
お兄様のように感じていた方から迫られて、
断れなかったと思いますよ。
それなのに、あちらの奥様は、
それはもう、凄い剣幕で…。
百合子様のことを泥棒猫呼ばわりして、本当に可哀想でした。
それで、そのまま、百合子様と海斗坊っちゃまは、
こちらの大先生の処で住み続けてたんですよ。
その後は、奥様が怖かったのか、
春樹様はあんまりこちらに来なくなって、
代わりに陸也坊っちゃまが1人で来るようになりましたね」と、
遠い目をして思い出すように話した。


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