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Snowtime 溶けて、消える
第1章 ***
 どれだけ冷水で急冷しても、氷点下を過ぎた室に氷はおろか雪ができることは無い。留まることを知らぬ地熱にすっかりぬるくなった雪解け水に撫でられながら、ずるずると力無く入口に戻っていく蛇は、その腹に詰まった名残雪を置き土産とばかりに吐き出していく。

 ぬぽんと栓が引き抜かれると同時に、みぞれがタイルの大地に降り注ぐ。大量の水溜まりと混じりあっては滲んでいくセイを息絶え絶えに見届ける僕達は、冬が終わったことを働かない頭で悟る。

 過ぎ去りし冬をもう一度、と浅ましく願ってしまう僕に、春を迎えた彼女は温水の蛇口を捻って、きれいさっぱり洗い流してしまう。

 向かい合うも目を合わせず。
 そもそも互いの体を預け、寄り添っている僕達が目を合わせられるはずもなく。

 優しい春の嵐は営みなんて最初から無かったかのように、跡形も無く消し去っていった。


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