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嵐の夜に痕をつけられて
第6章 相沢の謝罪
「恵」

「亮太……」


振り返るとそこには亮太がいた。あの日以来だ。


「いやぁ、悪なったなぁ。残業させちゃって」


ニヤニヤ笑いながら、そう言って部屋に入ってくる。
嫌だ。怖い。近寄らないで。


「も、もう終わるから」


そう言って咄嗟に視線を外した。
急いでデータを保存してパソコンを落とす。

机の上を片付けてカバンを掴み立ち上がると、亮太は目の前に立っていた。


「そんなにあからさまに逃げるなよ。少し話そうぜ」

「今日そちらからいただいた分はちゃんと入力しました。今度からは締め切りを守ってください」


それだけ言って、私は足早に亮太の横をすり抜けようとした。


「待てって」

「やめっ……」


亮太が私の手首を掴んで引き止める。
この前と同じだ。強い力でとても振りほどけない。
逃げられないという恐怖が襲ってくる。


「いやぁ、まさかなぁ。
 相沢さんとは思わなかったよ」


亮太は笑っている。


「いつから俺のこと裏切ってたの? 
 二人で俺のこと笑ってたんだろ?」


裏切っていたのは亮太だ。
その相手と一緒に私のことを笑っていたのも亮太だ。

私が何も言わないのをいいことに亮太は一人で喋り続ける。
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