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嵐の夜に痕をつけられて
第6章 相沢の謝罪
「なぁ恵、俺と別れたくせに何平気な顔してんの?
 いつも俺がいなきゃ何にもできないみたいな顔してたくせにさ」


嫌われたくなかっただけだ。


「いつも俺の言うことなんでも聞いてくれたじゃん」


本当のことを言うのが怖かっただけだ。


「サキもさぁ、相沢さんかっこいいとかしょっちゅう言うんだよ。
 みんなあんな男の何がいいのかね。
 融通も効かない、理屈ばっかり並び立てる、仕事しにくいったらない。
 俺の上司だって手ぇ焼いてるよ。
 全然言うこと聞きやしねぇもん。
 上司の言うことなんて素直に聞いてりゃいいのにさ」


やめて。相沢さんはそんな人じゃない。


「恵も新人の頃に散々あいつに泣かされたって言ってただろ? 
 なのに結局顔が良ければ何でもいいってか。
 どうせ遊ばれてんだから俺ともまた遊ぼうぜ」


違う。亮太と一緒にしないで。


「嫌よ。絶対に嫌」


やっと声が出た。もう我慢しない。
言えなかったことが溢れてくる。


「私は相沢さんと浮気なんかしてない。
 サキちゃんと……色んな人とずっと浮気してた亮太と一緒にしないで。
 あの人は誰に対しても態度を変えないだけ。
 いつも仕事に対して真面目なだけよ。
 勢いだけで雑な仕事をする誰かさんとは違うの」


言い返す私に亮太は驚いている。
当たり前だ。
亮太に対してこんなにはっきりと意見したことなどない。


「手を離して。私にもう関わらないで」

「随分はっきり言うじゃねぇか。」


亮太はもう笑っていない。
手首を引っ張られ、もう片方の手で顎を掴まれたときだった。


「おい、何してる」


廊下から聞き慣れた声がした。
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