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嵐の夜に痕をつけられて
第6章 相沢の謝罪
「悪かったな」

「え?」


しばらく二人で黙って歩いていると、相沢さんがポツリと言った。


「うちの部署の不手際を処理してもらって」

「あ、ああ。いえ、仕事ですから」


本心だった。
今日みたいなことはよくある事ではないが、誰かのミスが他の人の仕事に影響するのは当たり前のことだ。


「単純作業なんだから後輩にやらせればよかったのに」

「用事があったそうです」

「立川だって用事があるって言えば帰れるじゃないか」

「私は何も予定はありませんでしたし、誰かがやらなきゃいけないので」

「……お前はいつもそうなんだな」


それだけ言って相沢さんはしばらく黙る。
そして思い出したように言った。


「新人の頃は俺は散々泣かせたらしいな」

「え、いや、あの……」


さっきの亮太との会話を言っているんだろう。
どう弁解しようかと迷っていると、


「立川は俺が苦手だろう?」


そう言って相沢さんは足を止めた。
つられて私も止まって見上げると、相沢さんは切なそうな顔で私を見つめていた。

その顔に私の胸がギュッと締めつけられる。


「た、確かに相沢さんに指導されていたときは楽ではありませんでした。
 毎日とにかく沢山考えさせられるし、中途半端なことは許されないし。
 でもそのおかげで今の私があります。
 仕事に対する姿勢は相沢さんに教えられました。
 感謝しています」
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