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契約的束縛・過ぎ来し方(すぎこしかた)のメモリー
第3章 メモリー仁科

「……どうしました?」
「突然申し訳ございません盟主」
「掛けてきたということは用があるのでしょう」
「はい日本の件で少々……。そちらにお邪魔してもよろしいでしょうか?」
「おや香港に?」
「夕方到着しました」
「電話ではの話ですか、いいですよ直接聞きます」
「はい、ではお伺いします」

スマホを置いて私はまた窓から外を見る……。ルークが香港に戻って来たのはいいとして、いつからだろうかルークがこう私に対して一歩引くようになったのは? ドイツに居た頃はまだ普通だった……とは思う、では世界一周した時? それとも香港に来てから? 前はスレスレでも『ゼクス様』と呼んでいたのが今は盟主としか呼ばない、なにを言っても私と行動を共にしようとしない、そして私が与えた賢人という地位の仮面を被りルーク本来の心を隠すようになってしまった。

「なにを考えたんですかルーク……」

命は与えてもルークの自主性を止めたことはないはず、だとすればこれはルークの自主性と取れなくもなく私のほうも踏み込めないまま。……全てを封じてもルークは変わらないと思っていた私の甘さとも言いますが。

「弱くなりましたね私は」

『なぜ』と悩み出せない答えに逡巡とする、そんな私だからルークも……。

「先ほどの蒸し返しは嫌ですよ」

思いを断ち切り私は席から立ち上がる……ルークを迎えるために。
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