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契約的束縛・過ぎ来し方(すぎこしかた)のメモリー
第4章 メモリー本郷

「すまんな本郷、有能な人材を失うのは惜しいが……」
「分かっています、今の俺ではもう自衛官にはなれません」
「任官辞退(自衛官とは違う道を行く卒業者)とは違う、今後の事は出来るだけするつもりだ」
「はい……教官」

五体満足それが自衛官の基本、こんな怪我を負った俺はもう自衛官としての道は完全に閉ざされた。教官の言いたい事は分かるが、出来れば自分のこれからは自分で探したい。世間など分からんがなんとかなるとは思う、そうだろ? 防衛大に進んでから一歩も敷地から出たことはないんだ世間から離れて当たり前なんだよ、そんな俺の僅かな矜持が教官に頼らないこと。……これ以上関わりたくない、そんな意味も含まれてはいる。

(今の俺があいつらに会えば、俺はあいつらを殺しかねない)

軽率な判断で俺をこんな目に合わせたあいつら、次に会えば間違いなく俺はあいつらに手を掛けるだろう、どんな方法を取ってでもあいつらを潰すそれが分かるだけに近寄りたくないんだ。
だが俺の中にあるこの消えない怒りはどうする? このまま泣き寝入りをするのか? 俺は自衛官という道を断たれたのに何食わぬ顔をして自衛官……果てには幹部になっていくあいつらをずっと恨みながら生きていくのか?

「冗談じゃない、なぜあいつらを覚えている必要がある?」

これから先あいつらのことを考えながら生きる……それこそふざけんな! こうなってしまった以上俺には俺の人生がある、それをあんなつまらない連中への負の感情を抱えながらなど御免被りたい。あんな欲丸出しの人種に二度と関わるものか、幹部候補生という皮を被った色欲の塊共と俺を一緒にしないで欲しいぞ。
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