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縛られたい
第4章 優子さんの願い〜まりあ
「あ!
来週中にマンションの契約、出来そうなんです。
この家も借りたいってヒトが日曜に来て、
ナルハヤでって借りたいって言ってて。
まあ、ここは本当にもう殆ど何もないし、
寝袋で寝てるし、
荷物もまとめてスーツケースに入れてあるから、
週末からホテル暮らしして、マンションの契約終わったらそのまま引っ越しかな?」

「僕、手伝えるよ?
春休みだし」

「嬉しいけど、
こっちに来るよりお母様の処に行ってあげて?」

「行っても何にも出来ないよ?
お母さん、寝てるだけでさ」

「一緒の空間に居るだけで良いのよ?
私もね、もっと一緒に居たかった。
もっとホスピスに行けば良かったって、
今でも思うもの」と、
優斗くんの頬をそっと撫でて言った。


「ふーん。
じゃあ、まりあさんも一緒に行ってくれる?」

「良いわよ?
阿部さんも行ってくれますよね?
あそこ、車がないと、
なかなか行くの大変なんですもの」と笑った。


「まりあさんて、何歳なの?」

「えっ?
女性に年齢訊くのは、
マナー違反よ?」

「そうなんだ」

「25歳だけどね?」

「14歳、離れてるのか。
じゃあ、僕と結婚って、出来るの?」

「えっ?」

「僕が大人になったら、
まりあさんと結婚出来る?」

「んー。
どうかな?
お互いに愛し合ってれば出来なくはないけど、
大変だよ?」

「大変って?」

「まず、親とか親戚を説得しないといけない」

「どうして?」

「だって、優斗くんが結婚出来る年齢になった時、
私はそれに14歳足した年齢になってるから、
まずは、出産が厳しいし、
周りからも歳の差のこと、あれこれ言われちゃうよ?」


「2人が良ければ良いんじゃないの?」

「んー。
阿部さん、どう思いますか?」

「そうだな。
2人が良ければそれで良いかもしれないけど…。
俺も両親に認めて貰えなくて勘当されて、
優斗たち、一度もおじいちゃんたちに会えてないしな。
歳を取ったら、それ、寂しいよな」

「じゃあ、お父さんは反対する?」

「いやいや、その前に、
渡辺さんの気持ちの確認だろう?
そんな歳下でさ、
頼りにならないって思うかもよ?」

「良いもん。
僕、頑張るから!」



そして、マンション購入と引っ越しについて、
大どんでん返しを喰らうことになるなんて、
その時の私は知らなかった。





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