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ノーサイドなんて知らない
第8章 言葉に出来ない不安
そんな眠れない日が続いている中、
5日ほど過ぎた朝のことだった。


いつものようにキッチンで朝食の準備をして、
カウンターにトレイを置いて、
お皿をそこに置いて行こうとした時、
下腹部に鈍痛が走った。


思わずうめいてしまって、
そのままお腹を押さえながら座り込むようにしゃがんでしまった。


コーヒーを淹れていた熊野さんが慌てて私に駆け寄る。


「茉莉(めあり)、どうした?
腹が痛いのか?」と抱え込むようにすると、
抱き上げてソファに運んでくれる。


身体を丸めるようにしてみるけど、
痛くて、
涙が滲んでしまう。

脂汗も出るような嫌な痛み。


「お手洗いに行きたいです」と言うと、
抱き上げて連れて行ってくれて、
そっと身体を下ろしてくれる。

壁に捕まりながら中に入ると、
「心配だから、ドアを閉めないで?」と言われる。


私はドアを閉める力もない程で、
なんとか座ってショーツを下ろすと、
クロッチの処が少しだけ血が滲んだようになっていた。


「どうしよう?
赤ちゃんが…?」と震えてしまう。


「大丈夫。
すぐ病気に行こう。
えっと、いつものバッグに診察券とか、
入ってるよね?
念の為、下着の替えとナプキン、鞄に入れよう。
俺がやっても良い?」と言いながら、
病院に電話をしている。


まだ、時間外だけど、
すぐに来るように言われたようだった。


「こんな格好で良い?
ブラもしてなくて…」と言うと、
「そんなこと…。
大丈夫だよ。
車椅子、欲しいくらいだけど。
取り敢えず、抱えていくから」と言うと、
本当に私を抱き上げて、
地下の駐車場に向かった。
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