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第2章 社内の風景

そんな男の表情に気づかないのか、女は近づくとペコリと頭を下げた後、言った。

「この間はありがとうございました。
　とても、助かりました」

大きな半月型の両目をキラキラさせる表情に、逃げ出したい気分になってしまう。

「い、いや・・・・
　たいしたことないから・・・」

そのまま自分の図面ブースに戻っていく男の背中に、女は微笑みながら呟いた。

「ありがとうございました・・・坂口さん」

オフィスの空調のいたずらだろうか、ストレートボブの前髪がふわりとあがり、綺麗なオデコが現れた。
東出由美の美しさが輝いた瞬間であった。